彼は「来た道とは違う道で帰ろう」と私に言った。
私が来た道を引き返して帰ろうとした時だ。
一瞬意味が分からなかった。来た道をそのまま帰れば道に迷う事も無いし、何の障害もなく時間通りに帰宅出来る。極めて合理的な行動であるはず。しかし、次の瞬間「ああ、彼は合理性よりも好奇心・開拓心の方が強いんだな」と感じ、すぐに同意した。・・・が同時に聞いてみた「どうして?」彼「だって面白くないじゃん」やはり開拓心が強いんだ。なんだか私は楽しくなった。
それ以来、この出来事は私の行動規範となっている。歩いて来た道。その道は道路だけとは限らない。何らかの行動であったり、選択であったりする訳だ。思えば彼が技術職から営業職へ移動した際もその考えが元にあったのかも知れない。普通なら技術職から営業職へは移らない。しかもその選択は彼に委ねられていたからね。彼自身「コミュ障だから・・・」と自己分析しているのに営業職を選択したのはやはり好奇心・開拓心・・・またはストイックな環境に敢えて置き、自分自身を追い込む為でもあったかも知れない。この辺りの心理は彼の求道者たる側面も表しているのだろう。